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いきなりですが、タオルはお好きですか。今朝使ったタオルはどんなタオルですか?何気なく使っているタオルですが、製法や産地、特徴は様々。知るほどに面白いタオルづくりについて、今回は今治タオルの専門家に伺いました。日々のお手入れ方法などもご紹介します。
パイル織でつくられた布地から「タオル」がつくられます。パイルとは、表面にループ状に綿糸を織り出した生地で、柔らかな質感と優れた吸水性・保湿性を持つのが特徴です。
タオルの基本の仕事は水分をぬぐうこと。
パイルの持つ吸水性の高さは、よいタオルの第一条件ともいえます。
検査協会や生産組合それぞれの基準をもとに、タオルの吸水性は検査されています。たとえば今治タオル工業組合が独自に定める「今治タオルブランド」の品質基準には「5秒ルール」があるそうです。それは、タオル片を水に浮かべたら5秒以内で沈み始める。さらに3回洗たくしてもその吸水性が落ちないこと。いい仕事をしてくれるタオルの秘密は、製造加工の質へのこだわりにありました。
産地による違いはありますが、今治タオルの一般的な工程は、紡績会社から仕入れた糸でタオルづくりを始めます。糸を撚(よ)り、精錬漂白(先ざらし)、先染め、糊付けなどの前処理を施してから、タオル専用の織機で織り上げます。その後、丁寧に糊抜き加工などを行い、裁断して周囲を縫い上げれば、タオルが完成。
そのままでは強度が弱い生糸を1本または2本以上揃えてねじり、丈夫な糸とするのが「撚(よ)り」。
タオルは専用の織機を使用。経糸(たていと)には2種類の糸を用い、地になる生地とパイルを作りながら織り上げる。
裁断後、パイル地のミミ(長い方の辺)とヘム(短い方の辺)をミシンで1枚1枚縫い上げ、タオルに。
無数に立ち上がるループ状の糸による高い吸水性はもちろん、すき間に空気を含んだやわらかな風合いがパイルの身上。同時に、パイルのすき間には皮脂やゴミなどが入りこみやすく、たまりやすい構造ともいえます。水分を含んだ状態でタオルを放置すると、たまった汚れに雑菌が繁殖し、ニオイが発生する原因にも。
オーガニックコットンのタオルは、3年以上農薬や化学肥料を使わずに有機栽培された特別な綿花が原料。一ヶ月ほどかけて茎の下の方から順に熟していく実をひとつずつ収穫します。手間ひまかけた原料のよさをしっかり活かす。肌触りよく水をよく吸い、保湿性も高いパイル生地はそこから生まれるのです。
ふだん当たり前に使っているハンカチタオルやタオルケットは、じつは世界に先駆けて日本人が考案したものなのだそう。工夫好きの日本人ならではのアイデアにあふれたタオル製品に、海外からの注目も集まっています。
触り心地やサイズ、色柄ものなど、タオルの種類はどんどん豊富になっています。そこでお客さまがタオルをお探しの時は、お好みや目的を伺ってからオススメしています。例えば年配の方なら濡らして絞るときに力が入りにくいから薄手のタオルがいいなど、適したタオルは人によってさまざまです。「今治タオル」と聞くと白いタオルを思い浮かべる人も多くいます。でもその白いタオル、約100の企業がそれぞれつくっているので全部違うもの。ぜひいろいろなタオルを試して、ご自分のお気に入りの1枚を見つけていただけたら嬉しく思います。今治タオル 本店 タオルソムリエ 村上香織さん
ずっと快適に使いたい、お気に入りのタオル。
ふんわり長持ちさせる、お手入れのときのカンタンなアイデアをご紹介します。
タオルに製造工程などで含まれてしまった細かなホコリを取り除くためにも、
新しいタオルは使い始める前に一度洗たくしましょう。
湿った暗い場所に使ったタオルを放置すると、汚れや皮脂に雑菌が繁殖してニオイやカビが発生することも。なるべく放置せずに洗い、よく乾かすことが肝心です。風通しの良い日陰で干すことでタオルへのダメージも少なくなり、三角干しにすれば、頂点に水分が集まりやすく、乾きも早いのでオススメ。
愛用しているうちに肌ざわりが悪く感じたタオルは、洗たく後、乾燥する際に立ち上がるはずのパイルが、寝たままの状態になっていがち。洗たく後、両手でパタパタと振ってから干すとパイルが立ち上がって、ふっくら仕上がります。
パイルに爪などが引っかかり、糸が飛び出してしまったときは、引っ張らずにハサミでカットしてしまいましょう。根元でカットすれば、それ以上ほつれが進むことはありません。
せっかくキレイに洗って干しても、収納時に詰め込んだり密閉したりしては、タオルが湿気を吸ってしまいがち。風通しのいい場所に余裕をもってしまうのが、次に気持ちよく使うことにつながります。
2017年07月掲載(初出) 2021年2月更新