日常着で、おしゃれ着でもある、デニム。
老若男女問わず、ここまでくらしに 浸透している素材はなかなかありません。
アメリカのもの…というイメージも今は昔。
日本のデニムは、世界からも注目されているそうです。
そんなデニムの魅力を、日本を代表する生産地 「瀬戸内」で、デニム産業に携わる方々に伺いました。
長く付き合うためのお手入れのコツも あわせてお届けします。
瀬戸内エリアは、古くは綿を栽培し、藍染めなどの絣(かすり)をつくってきた地。戦後、学生服の生産などを担いながら、1960年代頃からデニムづくりを始めました。「アメリカの硬くて丈夫な作業着」として捉えられてきたデニムを、柔軟なアイデアやすぐれた技術力で「ファッション性の高いおしゃれ着」に進化させ、今では世界で注目される、ハイクオリティなデニムをつくり出しています。
本来「デニム」は、ジーンズやシャツなどの衣料になる前の生地を指す言葉。太い綿糸を綾織りしたコシのある生地で、その丈夫さからカジュアルウェアの定番素材になっています。
デニムの代表選手、ブルーデニムの特徴としては「色の変化」があります。生のデニム生地を色落ちさせてつくるブルーのグラデーションは、濃いものから淡いものまでさまざま。このような変化を前提としてつくられている生地は他にありません。
*リジッドデニム:水洗いを含めた加工が一切施されていないデニムのこと
デニムの糸を切ってみると、芯が白いことが分かります(芯白染め)。芯まで染まっていないことが特徴で、デニム生地独特の表情につながります。
(上)ロープ染色機
インディゴ染料を用い「ロープ染色」という方法で経糸(たていと)を染め(左) 織機で緯糸(よこいと)を打ち込みデニム生地を織りあげます。
画像提供:カイハラ株式会社
裁断
何枚も重ねたデニム生地の上に型紙をセットし、カッティングマシーンで裁断。熟練した技でさまざまなパーツを切り出していく。
裁断
何枚も重ねたデニム生地の上に型紙をセットし、カッティングマシーンで裁断。熟練した技でさまざまなパーツを切り出していく。
リベット取り付け
ポケットの端など力がかかりやすいところに、銅や真ちゅうなど金属製のリベット(鋲)を取り付けます。
縫製
裁断されたデニム生地を縫製。生地の厚みや縫う場所、取り付けるパーツなどに合わせ、専用ミシンを使い分けます。
リベット取り付け
ポケットの端など力がかかりやすいところに、銅や真ちゅうなど金属製のリベット(鋲)を取り付けます。
ジーンズの表情を生み出す軽石(左)やゴルフボール(上)。入れるものの種類や量によって仕上がり具合が変わります。
洗いは、糊を落とし、デニム製品の色合いを決める工程。軽石や薬品などといっしょに洗うことでさまざまな色に。
最新鋭のレーザーマシンによる加工では、破れをつくったり、着古したようなスジや柄をつけることも可能。
古着のような自然なダメージや色落ち感は、手作業でないと表現できない部分も。
厚さや質感の違うさまざまな生地のバリエーション。 洗い加工後の縮み方も設計したパターン。 デザインのこだわりを実現する縫製技術。 アタリや立体感、ダメージなどの加工技術。 デニムらしさに欠かせないリベットなどのパーツ。
すべてが組み合わさって、デニム衣料の魅力は日々進化しています。
ペイント加工や激しいダメージを施した、おしゃれなジーンズ。
デニム地のシャツやジャケット、帽子などさまざまな製品が。
日々新しいデザインが生まれるデニム製品。
たとえばジーンズは、今、世界で1年に20数億本*もつくられ最も親しまれている衣料になっています。あなたのくらしの中に、お気に入りのデニムはありますか?
*倉敷ファッションセンター(株)調べ
倉敷ファッション研究所 吉村恒夫さん
長年デニム産業に携わってきた中で、僕はデニムを「地球着」と呼ぶことがあります。というのも、デニムはいろんなカルチャーと結びつきながら世界中でエイジレス、ジェンダーレスに愛されるようになった、特別な衣料なんです。そのなかで日本のデニム生産地は、「古着加工」など柔軟な発想や高い技術力で、デニムの価値を劇的に高め、おしゃれ着に変えました。今も世界のデニムメーカーやトップブランドなど、世界のデニム市場と関わりながら、ジャパンデニムは日々進化し続けています。生地づくりから縫製や加工など、ハイレベルな日本のデニムづくりは、いわばショーケースとなって、世界のカジュアル・ファッションに影響しています。最近ではデニムづくりに志のある若い世代も増えて、瀬戸内だけじゃなく日本が一丸となって、「地球着」デニムのトレンドを引っ張っているんですよ。
長年デニム産業に携わってきた中で、僕はデニムを「地球着」と呼ぶことがあります。というのも、デニムはいろんなカルチャーと結びつきながら世界中でエイジレス、ジェンダーレスに愛されるようになった、特別な衣料なんです。そのなかで日本のデニム生産地は、「古着加工」など柔軟な発想や高い技術力で、デニムの価値を劇的に高め、おしゃれ着に変えました。今も世界のデニムメーカーやトップブランドなど、世界のデニム市場と関わりながら、ジャパンデニムは日々進化し続けています。生地づくりから縫製や加工など、ハイレベルな日本のデニムづくりは、いわばショーケースとなって、世界のカジュアル・ファッションに影響しています。最近ではデニムづくりに志のある若い世代も増えて、瀬戸内だけじゃなく日本が一丸となって、「地球着」デニムのトレンドを引っ張っているんですよ。
日々気兼ねなく着られるデニム衣料。
変化していく風合いを楽しみながら、付き合っていけるといいですね。色落ちする特徴のあるデニム製品について、「おろしたては他の衣料と別に洗う」という基本のほかに、日々のお手入れのコツをご紹介します。
家庭で洗えるかどうか、デニムについている取扱い表示をチェック。また、ヴィンテージデニムの洗たくについては、直接、販売店に聞いてみてください。
デニムに、下記の洗たく表示があった場合のみ、 下記の洗たく方法で洗ってください。
裏返しで摩擦を減らす
洗うときにはデニムを裏返しに。
洗たく中の摩擦を減らし、生地の起毛によるデニムの色合いの変化が緩和されます。
干すときは筒干しに
裏返しのまま陰干しに。厚手のデニムは、筒干しがオススメ。空気の流れをつくることで乾きが早くなります。(生乾きのニオイを防ぐことも)
人それぞれの付き合い方ができる魅力的な「デニム」。 フィット感も風合いも、自分にしっくり馴染んでくると、毎日が、ファッションが、きっともっと楽しくなりますね。
デニム生地の染め方「ロープ染色」をできるようになったのは、瀬戸内に伝わる絣織りの技術がルーツでした。今、国内最大の生地メーカーであるカイハラは、これからもデニム一筋にこだわって、自然素材の可能性を求め、新たなデニム生地を模索し続けます。
今求められる新しいデザインには、新しい縫い方が不可欠です。ミシンの改造、アタッチメントの開発、コンピュータ制御による、失敗のない縫い方等。こだわりを叶える縫製力を、我々は設備からつくり出して、デニムメーカーの情熱を実現するのが誇りです。
世界でも定番になっている古着風のストーンウォッシュ加工は、うち(豊和)から始まりました。今はシェービングやサンドブラスト、ヒゲ加工など、マシン加工と職人技の両方の力で変幻自在に。でも…まだまだ挑戦できる。次はもっと面白いことをやりたいですね。
取材協力:カイハラ株式会社、角南被服有限会社、
YKKスナップファスナー株式会社児島支店、 リョウザンミシン株式会社、株式会社ビッグジョン(順不同)
株式会社木下カッティングセンター、豊和株式会社、
2018年5月掲載(初出) 2020年5月更新