暮らし百景アーカイブ155

めくる朝。散歩に出かける夫に、声をかける。「切り抜きの裏側読みたいんだけど」あわてて手渡された一片を、ジグソーパズルのようにはめる。流し読みしてしまった朝は、再びじっくりと向かう。長方形の紙面には日本の端から世界の端までの出来事はもちろん、生活の知恵や俳句や音楽に至るまで、情報がぎっしりと詰まっている。鮮度だけで言うなら、テレビやインターネットのほうが最新だろう。けれどわたしは、端的な見出しや緻密に組まれた活字を、自分のペースで、時々後戻りしながら、追うのが好きだ。「新聞を読む人って、いいよな」学生の頃、サークルの仲間たちと理想のタイプの話になった。丸顔が好きだ、細面だと喋っていると、密かに憧れていた男の先輩がそう呟いた。翌日わたしは、朝刊を手に出勤する父を、パジャマのままで呼び止めた。「お父さん持っていかないで。わたしだって、読むんだから」四つ折りに畳まれた新聞を、まずは番組欄からめくる朝が始まった。めぐりゆく日々の軌跡を、一枚一枚めくって確かめながら、心に留まった記事を切り抜くのも楽しい。今朝切り抜かれた場所は、なるほど、わたしもハサミを入れたに違いない。あの時、夫がぽつんと呟いたから。新聞好きのわたしが、今ここにいる。

めくる朝。散歩に出かける夫に、声をかける。「切り抜きの裏側読みたいんだけど」あわてて手渡された一片を、ジグソーパズルのようにはめる。流し読みしてしまった朝は、再びじっくりと向かう。長方形の紙面には日本の端から世界の端までの出来事はもちろん、生活の知恵や俳句や音楽に至るまで、情報がぎっしりと詰まっている。鮮度だけで言うなら、テレビやインターネットのほうが最新だろう。けれどわたしは、端的な見出しや緻密に組まれた活字を、自分のペースで、時々後戻りしながら、追うのが好きだ。「新聞を読む人って、いいよな」学生の頃、サークルの仲間たちと理想のタイプの話になった。丸顔が好きだ、細面だと喋っていると、密かに憧れていた男の先輩がそう呟いた。翌日わたしは、朝刊を手に出勤する父を、パジャマのままで呼び止めた。「お父さん持っていかないで。わたしだって、読むんだから」四つ折りに畳まれた新聞を、まずは番組欄からめくる朝が始まった。めぐりゆく日々の軌跡を、一枚一枚めくって確かめながら、心に留まった記事を切り抜くのも楽しい。今朝切り抜かれた場所は、なるほど、わたしもハサミを入れたに違いない。あの時、夫がぽつんと呟いたから。新聞好きのわたしが、今ここにいる。

めくる朝。散歩に出かける夫に、声をかける。「切り抜きの裏側読みたいんだけど」あわてて手渡された一片を、ジグソーパズルのようにはめる。流し読みしてしまった朝は、再びじっくりと向かう。長方形の紙面には日本の端から世界の端までの出来事はもちろん、生活の知恵や俳句や音楽に至るまで、情報がぎっしりと詰まっている。鮮度だけで言うなら、テレビやインターネットのほうが最新だろう。けれどわたしは、端的な見出しや緻密に組まれた活字を、自分のペースで、時々後戻りしながら、追うのが好きだ。「新聞を読む人って、いいよな」学生の頃、サークルの仲間たちと理想のタイプの話になった。丸顔が好きだ、細面だと喋っていると、密かに憧れていた男の先輩がそう呟いた。翌日わたしは、朝刊を手に出勤する父を、パジャマのままで呼び止めた。「お父さん持っていかないで。わたしだって、読むんだから」四つ折りに畳まれた新聞を、まずは番組欄からめくる朝が始まった。めぐりゆく日々の軌跡を、一枚一枚めくって確かめながら、心に留まった記事を切り抜くのも楽しい。今朝切り抜かれた場所は、なるほど、わたしもハサミを入れたに違いない。あの時、夫がぽつんと呟いたから。新聞好きのわたしが、今ここにいる。

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