暮らし百景アーカイブ137

ロング・ツーリング。実家に帰ると、父が庭先でバイクを磨いている。大きな車体が陽を受けて、ピカピカと光っている。「お父さん、それ?」「やっぱり新車はいいだろ」父はこれまで、定年を過ぎて買ったバイクに十五年近く乗り続けていた。さすがに近頃は修理に出すことも増え、そのたびに買い替えを勧めても「まだ乗れるしなあ」と返事を濁していた。その父が、バイクを買い替えたのだ。「目がちょっと見えにくいんだ」と言い出したのは春先のこと。白内障だった。大事を取り、手術が済むまでしばらく、バイクを封印する決意をした。何かと用事を作っては遠乗りをしていた父が一転、日がな一日黙ってテレビをながめている。母が、どこか散歩にでも行けば?と勧めても「今日は、なあ」とあいまいな返事。手術が無事に終わってからも、こんな調子で日々は過ぎ、季節は秋になっていた。きっかけは、仲間から久々に誘われた半年ぶりのツーリングだったそうだ。「世界が輝いて見える!」山のもみじも空も雲も、鮮やかに父を歓迎していた。衝撃だった。もっと走りたい。これから先できるだけ長く…「で、新しいバイク、清水の舞台から飛び降りるつもりで買っちゃった」来週はどこぞの山へ、その次は海岸沿いをいつもの仲間と。聞けば、週末の予定はだいぶ先まで埋まっているようだ。「すっかり忙しくなっちゃって。無理しないでよ」と母は笑う。そうそう。安全運転で頼みますよ。

ロング・ツーリング。実家に帰ると、父が庭先でバイクを磨いている。大きな車体が陽を受けて、ピカピカと光っている。「お父さん、それ?」「やっぱり新車はいいだろ」父はこれまで、定年を過ぎて買ったバイクに十五年近く乗り続けていた。さすがに近頃は修理に出すことも増え、そのたびに買い替えを勧めても「まだ乗れるしなあ」と返事を濁していた。その父が、バイクを買い替えたのだ。「目がちょっと見えにくいんだ」と言い出したのは春先のこと。白内障だった。大事を取り、手術が済むまでしばらく、バイクを封印する決意をした。何かと用事を作っては遠乗りをしていた父が一転、日がな一日黙ってテレビをながめている。母が、どこか散歩にでも行けば?と勧めても「今日は、なあ」とあいまいな返事。手術が無事に終わってからも、こんな調子で日々は過ぎ、季節は秋になっていた。きっかけは、仲間から久々に誘われた半年ぶりのツーリングだったそうだ。「世界が輝いて見える!」山のもみじも空も雲も、鮮やかに父を歓迎していた。衝撃だった。もっと走りたい。これから先できるだけ長く…「で、新しいバイク、清水の舞台から飛び降りるつもりで買っちゃった」来週はどこぞの山へ、その次は海岸沿いをいつもの仲間と。聞けば、週末の予定はだいぶ先まで埋まっているようだ。「すっかり忙しくなっちゃって。無理しないでよ」と母は笑う。そうそう。安全運転で頼みますよ。

ロング・ツーリング。実家に帰ると、父が庭先でバイクを磨いている。大きな車体が陽を受けて、ピカピカと光っている。「お父さん、それ?」「やっぱり新車はいいだろ」父はこれまで、定年を過ぎて買ったバイクに十五年近く乗り続けていた。さすがに近頃は修理に出すことも増え、そのたびに買い替えを勧めても「まだ乗れるしなあ」と返事を濁していた。その父が、バイクを買い替えたのだ。「目がちょっと見えにくいんだ」と言い出したのは春先のこと。白内障だった。大事を取り、手術が済むまでしばらく、バイクを封印する決意をした。何かと用事を作っては遠乗りをしていた父が一転、日がな一日黙ってテレビをながめている。母が、どこか散歩にでも行けば?と勧めても「今日は、なあ」とあいまいな返事。手術が無事に終わってからも、こんな調子で日々は過ぎ、季節は秋になっていた。きっかけは、仲間から久々に誘われた半年ぶりのツーリングだったそうだ。「世界が輝いて見える!」山のもみじも空も雲も、鮮やかに父を歓迎していた。衝撃だった。もっと走りたい。これから先できるだけ長く…「で、新しいバイク、清水の舞台から飛び降りるつもりで買っちゃった」来週はどこぞの山へ、その次は海岸沿いをいつもの仲間と。聞けば、週末の予定はだいぶ先まで埋まっているようだ。「すっかり忙しくなっちゃって。無理しないでよ」と母は笑う。そうそう。安全運転で頼みますよ。

image-02-s-02

一覧を見る

ご意見・ご感想をお寄せください

Page Top