暮らし百景アーカイブ127

いっしょの理由。リビングに、娘がぬいぐるみを連れて現れた。いつものようにクマの耳を引っぱりながら。それが、五歳になる僕の娘のかわいがり方だ。汚れたって、毛並みがハゲたって、このクマは特別なのだ。「だめよクマスケ。野菜食べなくちゃ」母親の口調をまねて、ままごとを始めた。一人っ子の娘が、お姉さんのように振る舞っているのに気づいた。ちょっと前までは違っていた。ぬいぐるみよりも小さかったころは、揺りかご代わりに抱きついていた。幼稚園の入園式の前夜には、娘はこう言った。「クーちゃんの服はアイロンしないの?」それが真剣だったので、妻と笑った。そう、こないだまでは、ふたごみたいにいつでも一緒の“ふたり”だった。だから、お盆の里帰りのときクマスケを留守番にしてもいいと、娘がOKしたのには驚いたのだ。混む新幹線に、荷物になるお古のクマまで持っていくのは、親としては避けたいこと。だが、去年までは娘の大反対でどうにも連れて行くほかなかった。今年は、帰省中もずっと忘れているふうだった。これも意外だった。あれ、もういいのかな——と思っていたら、家に帰ると元どおり。今だって、クマスケと遊んでいる。どうやらあっさり卒業というわけではなさそうだ。「ゆみ。クマスケと一緒じゃなくても眠れる?」試しに聞いてみた。「ううん。ゆみと一緒じゃないとクマスケが、さみしいもん。小さいから」なるほど。都合がいいけど、お姉さんの台詞だ。やっぱり、ちょっと成長したことは確かみたいだ。

いっしょの理由。リビングに、娘がぬいぐるみを連れて現れた。いつものようにクマの耳を引っぱりながら。それが、五歳になる僕の娘のかわいがり方だ。汚れたって、毛並みがハゲたって、このクマは特別なのだ。「だめよクマスケ。野菜食べなくちゃ」母親の口調をまねて、ままごとを始めた。一人っ子の娘が、お姉さんのように振る舞っているのに気づいた。ちょっと前までは違っていた。ぬいぐるみよりも小さかったころは、揺りかご代わりに抱きついていた。幼稚園の入園式の前夜には、娘はこう言った。「クーちゃんの服はアイロンしないの?」それが真剣だったので、妻と笑った。そう、こないだまでは、ふたごみたいにいつでも一緒の“ふたり”だった。だから、お盆の里帰りのときクマスケを留守番にしてもいいと、娘がOKしたのには驚いたのだ。混む新幹線に、荷物になるお古のクマまで持っていくのは、親としては避けたいこと。だが、去年までは娘の大反対でどうにも連れて行くほかなかった。今年は、帰省中もずっと忘れているふうだった。これも意外だった。あれ、もういいのかな——と思っていたら、家に帰ると元どおり。今だって、クマスケと遊んでいる。どうやらあっさり卒業というわけではなさそうだ。「ゆみ。クマスケと一緒じゃなくても眠れる?」試しに聞いてみた。「ううん。ゆみと一緒じゃないとクマスケが、さみしいもん。小さいから」なるほど。都合がいいけど、お姉さんの台詞だ。やっぱり、ちょっと成長したことは確かみたいだ。

いっしょの理由。リビングに、娘がぬいぐるみを連れて現れた。いつものようにクマの耳を引っぱりながら。それが、五歳になる僕の娘のかわいがり方だ。汚れたって、毛並みがハゲたって、このクマは特別なのだ。「だめよクマスケ。野菜食べなくちゃ」母親の口調をまねて、ままごとを始めた。一人っ子の娘が、お姉さんのように振る舞っているのに気づいた。ちょっと前までは違っていた。ぬいぐるみよりも小さかったころは、揺りかご代わりに抱きついていた。幼稚園の入園式の前夜には、娘はこう言った。「クーちゃんの服はアイロンしないの?」それが真剣だったので、妻と笑った。そう、こないだまでは、ふたごみたいにいつでも一緒の“ふたり”だった。だから、お盆の里帰りのときクマスケを留守番にしてもいいと、娘がOKしたのには驚いたのだ。混む新幹線に、荷物になるお古のクマまで持っていくのは、親としては避けたいこと。だが、去年までは娘の大反対でどうにも連れて行くほかなかった。今年は、帰省中もずっと忘れているふうだった。これも意外だった。あれ、もういいのかな——と思っていたら、家に帰ると元どおり。今だって、クマスケと遊んでいる。どうやらあっさり卒業というわけではなさそうだ。「ゆみ。クマスケと一緒じゃなくても眠れる?」試しに聞いてみた。「ううん。ゆみと一緒じゃないとクマスケが、さみしいもん。小さいから」なるほど。都合がいいけど、お姉さんの台詞だ。やっぱり、ちょっと成長したことは確かみたいだ。

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