暮らし百景アーカイブ120

よみがえる感覚。「あれ?万年筆、ですか」打合せのスケジュールを相談したあと、手帳に書き込む課長の手元には、真新しい、つやつやと光る万年筆が握られている。「本屋でフェアをやっていたんだよ。書き心地がよくて、衝動買いだ。ハハハ。書いてみるか?」すこし太めの胴軸は手に収まりがよく、しっとりと馴染む。ほどよい重みに、初めて手にした日がふっとよみがえる。中学生のころ、書斎に置いてあった父の万年筆が格好よく思えて、目を盗んで試し書きしたことがある。おずおずと白い紙に、ペン先を落とす。カリカリと引っかかる独特の感触と、まるで紙の繊維が浮かび上がるように滲む筆跡。濃淡があって均一ではない軌跡に、オトナを味わった気がしたものだ。「線を引いて消しても残るから、あとで思い返せるのが新鮮でさ」たしかにキーボードで打ったものは、いったん消去すると文字も記憶も次々に上書きされて、残るのはいちばん新しいもの。アナログとデジタル、どちらが良くてどちらが悪いものでもないけれど、久しぶりに触れるからこそ思い出す感覚があるのかもしれない。カチッと、胸がすくような小気味よい手応えでキャップがしまる。ちょっと欲しくなっている自分がいた。

よみがえる感覚。「あれ?万年筆、ですか」打合せのスケジュールを相談したあと、手帳に書き込む課長の手元には、真新しい、つやつやと光る万年筆が握られている。「本屋でフェアをやっていたんだよ。書き心地がよくて、衝動買いだ。ハハハ。書いてみるか?」すこし太めの胴軸は手に収まりがよく、しっとりと馴染む。ほどよい重みに、初めて手にした日がふっとよみがえる。中学生のころ、書斎に置いてあった父の万年筆が格好よく思えて、目を盗んで試し書きしたことがある。おずおずと白い紙に、ペン先を落とす。カリカリと引っかかる独特の感触と、まるで紙の繊維が浮かび上がるように滲む筆跡。濃淡があって均一ではない軌跡に、オトナを味わった気がしたものだ。「線を引いて消しても残るから、あとで思い返せるのが新鮮でさ」たしかにキーボードで打ったものは、いったん消去すると文字も記憶も次々に上書きされて、残るのはいちばん新しいもの。アナログとデジタル、どちらが良くてどちらが悪いものでもないけれど、久しぶりに触れるからこそ思い出す感覚があるのかもしれない。カチッと、胸がすくような小気味よい手応えでキャップがしまる。ちょっと欲しくなっている自分がいた。

よみがえる感覚。「あれ?万年筆、ですか」打合せのスケジュールを相談したあと、手帳に書き込む課長の手元には、真新しい、つやつやと光る万年筆が握られている。「本屋でフェアをやっていたんだよ。書き心地がよくて、衝動買いだ。ハハハ。書いてみるか?」すこし太めの胴軸は手に収まりがよく、しっとりと馴染む。ほどよい重みに、初めて手にした日がふっとよみがえる。中学生のころ、書斎に置いてあった父の万年筆が格好よく思えて、目を盗んで試し書きしたことがある。おずおずと白い紙に、ペン先を落とす。カリカリと引っかかる独特の感触と、まるで紙の繊維が浮かび上がるように滲む筆跡。濃淡があって均一ではない軌跡に、オトナを味わった気がしたものだ。「線を引いて消しても残るから、あとで思い返せるのが新鮮でさ」たしかにキーボードで打ったものは、いったん消去すると文字も記憶も次々に上書きされて、残るのはいちばん新しいもの。アナログとデジタル、どちらが良くてどちらが悪いものでもないけれど、久しぶりに触れるからこそ思い出す感覚があるのかもしれない。カチッと、胸がすくような小気味よい手応えでキャップがしまる。ちょっと欲しくなっている自分がいた。

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