暮らし百景アーカイブ117

風の二重奏。熱帯夜にたまりかねて、クーラーを入れて床に就いた。一人暮らしのOLの部屋は、冷え過ぎて加減が難しい。冷房に弱いので、翌朝、体が重い。実家では、風がいつも吹いていた。海からほど近く、谷あいの地形で風の通り道になっていて、夏でも自然の涼しさが優しく届いていた。都会は風がない。だから風邪をひいてしまう。「宅配便送ったから、土曜の朝、受け取って下さい。夏風邪を治すように」母からメールが来た。何かと実家に頼ってしまう独り立ちできない私。親の気遣いがありがたい。届いたダンボールの中に、干物や果物、衣類に混じって、小箱があった。開けてみると、それは陶器で作られた小ぶりな風鈴だった。『風鈴市がありました。焼き物の風鈴が面白かったので、買い求めました。我が家にも、同じ物を吊るしています』父の書いた手紙が添えられていた。その夜は、めずらしく風に恵まれた。年中いっしょだったカーテンを、麻のものに取り替え、ベランダに打ち水を放ってみた。陶器の風鈴は、からころんと高く、澄んだ音色を奏でた。実家でも、同じ音色が響いているのだろう。縁側、すいか、台所の母、半パンでナイターを聞く父・・・。夏の夜の光景がありありと浮かんでくる。週末にちょっと、実家のからころんを聞きに帰ってみよう。そう思った。

風の二重奏。熱帯夜にたまりかねて、クーラーを入れて床に就いた。一人暮らしのOLの部屋は、冷え過ぎて加減が難しい。冷房に弱いので、翌朝、体が重い。実家では、風がいつも吹いていた。海からほど近く、谷あいの地形で風の通り道になっていて、夏でも自然の涼しさが優しく届いていた。都会は風がない。だから風邪をひいてしまう。「宅配便送ったから、土曜の朝、受け取って下さい。夏風邪を治すように」母からメールが来た。何かと実家に頼ってしまう独り立ちできない私。親の気遣いがありがたい。届いたダンボールの中に、干物や果物、衣類に混じって、小箱があった。開けてみると、それは陶器で作られた小ぶりな風鈴だった。『風鈴市がありました。焼き物の風鈴が面白かったので、買い求めました。我が家にも、同じ物を吊るしています』父の書いた手紙が添えられていた。その夜は、めずらしく風に恵まれた。年中いっしょだったカーテンを、麻のものに取り替え、ベランダに打ち水を放ってみた。陶器の風鈴は、からころんと高く、澄んだ音色を奏でた。実家でも、同じ音色が響いているのだろう。縁側、すいか、台所の母、半パンでナイターを聞く父・・・。夏の夜の光景がありありと浮かんでくる。週末にちょっと、実家のからころんを聞きに帰ってみよう。そう思った。

風の二重奏。熱帯夜にたまりかねて、クーラーを入れて床に就いた。一人暮らしのOLの部屋は、冷え過ぎて加減が難しい。冷房に弱いので、翌朝、体が重い。実家では、風がいつも吹いていた。海からほど近く、谷あいの地形で風の通り道になっていて、夏でも自然の涼しさが優しく届いていた。都会は風がない。だから風邪をひいてしまう。「宅配便送ったから、土曜の朝、受け取って下さい。夏風邪を治すように」母からメールが来た。何かと実家に頼ってしまう独り立ちできない私。親の気遣いがありがたい。届いたダンボールの中に、干物や果物、衣類に混じって、小箱があった。開けてみると、それは陶器で作られた小ぶりな風鈴だった。『風鈴市がありました。焼き物の風鈴が面白かったので、買い求めました。我が家にも、同じ物を吊るしています』父の書いた手紙が添えられていた。その夜は、めずらしく風に恵まれた。年中いっしょだったカーテンを、麻のものに取り替え、ベランダに打ち水を放ってみた。陶器の風鈴は、からころんと高く、澄んだ音色を奏でた。実家でも、同じ音色が響いているのだろう。縁側、すいか、台所の母、半パンでナイターを聞く父・・・。夏の夜の光景がありありと浮かんでくる。週末にちょっと、実家のからころんを聞きに帰ってみよう。そう思った。

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