暮らし百景アーカイブ82

午後、小さな画廊にて。賑やかな通りを一つ折れた場所に、その小さな画廊はあった。個展を知らせるハガキが届いたのは三週間前。一瞬差出名を見てもわからなかったが、端に書かれた「中学の担任だった○○です」という手書き文字で、やっとその顔と、そういえば彼が美術の教師でもあったことを思い出した。そのハガキを通勤鞄にしまったのは、個展会場がよく仕事で立ち寄る駅の比較的近くだったからだ。ドアを開けると、隅の椅子に座っていた男性がこちらを向いた。数秒後、彼は言った。「お久しぶり、○○さん」美術部でもなく、特にクラスでも目立たなかったと思う私の名前を覚えていてくれたこと(もう卒業して二十五年だ)、そして○○君ではなく、○○さんと呼ばれたことが何だか不思議だった。絵は身の周りの情景を描いた、淡い色の水彩画だった。一通り見たあと、絵は僕には良くはわからないけれどと断った上で感想を述べると、彼はとても嬉しそうに「ありがとう」と言った。水彩画は教職を退いてからコツコツと描きためていたとのこと。そして念願だった個展を開くにあたり、何冊もの卒業名簿を開いて案内状の宛名書きをした際、ほとんどの生徒の顔を思い出せたとも。「それじゃ、失礼します」帰り際に、もう一度一枚の絵を眺めた。最も印象に残った絵。朝の光が、登校途中の中学生達を優しく包んでいる。それは絵を描く時の彼の眼差しであると同時に、かつての「先生」の眼差しでもあったのだろうと私は思った。

午後、小さな画廊にて。賑やかな通りを一つ折れた場所に、その小さな画廊はあった。個展を知らせるハガキが届いたのは三週間前。一瞬差出名を見てもわからなかったが、端に書かれた「中学の担任だった○○です」という手書き文字で、やっとその顔と、そういえば彼が美術の教師でもあったことを思い出した。そのハガキを通勤鞄にしまったのは、個展会場がよく仕事で立ち寄る駅の比較的近くだったからだ。ドアを開けると、隅の椅子に座っていた男性がこちらを向いた。数秒後、彼は言った。「お久しぶり、○○さん」美術部でもなく、特にクラスでも目立たなかったと思う私の名前を覚えていてくれたこと(もう卒業して二十五年だ)、そして○○君ではなく、○○さんと呼ばれたことが何だか不思議だった。絵は身の周りの情景を描いた、淡い色の水彩画だった。一通り見たあと、絵は僕には良くはわからないけれどと断った上で感想を述べると、彼はとても嬉しそうに「ありがとう」と言った。水彩画は教職を退いてからコツコツと描きためていたとのこと。そして念願だった個展を開くにあたり、何冊もの卒業名簿を開いて案内状の宛名書きをした際、ほとんどの生徒の顔を思い出せたとも。「それじゃ、失礼します」帰り際に、もう一度一枚の絵を眺めた。最も印象に残った絵。朝の光が、登校途中の中学生達を優しく包んでいる。それは絵を描く時の彼の眼差しであると同時に、かつての「先生」の眼差しでもあったのだろうと私は思った。

午後、小さな画廊にて。賑やかな通りを一つ折れた場所に、その小さな画廊はあった。個展を知らせるハガキが届いたのは三週間前。一瞬差出名を見てもわからなかったが、端に書かれた「中学の担任だった○○です」という手書き文字で、やっとその顔と、そういえば彼が美術の教師でもあったことを思い出した。そのハガキを通勤鞄にしまったのは、個展会場がよく仕事で立ち寄る駅の比較的近くだったからだ。ドアを開けると、隅の椅子に座っていた男性がこちらを向いた。数秒後、彼は言った。「お久しぶり、○○さん」美術部でもなく、特にクラスでも目立たなかったと思う私の名前を覚えていてくれたこと(もう卒業して二十五年だ)、そして○○君ではなく、○○さんと呼ばれたことが何だか不思議だった。絵は身の周りの情景を描いた、淡い色の水彩画だった。一通り見たあと、絵は僕には良くはわからないけれどと断った上で感想を述べると、彼はとても嬉しそうに「ありがとう」と言った。水彩画は教職を退いてからコツコツと描きためていたとのこと。そして念願だった個展を開くにあたり、何冊もの卒業名簿を開いて案内状の宛名書きをした際、ほとんどの生徒の顔を思い出せたとも。「それじゃ、失礼します」帰り際に、もう一度一枚の絵を眺めた。最も印象に残った絵。朝の光が、登校途中の中学生達を優しく包んでいる。それは絵を描く時の彼の眼差しであると同時に、かつての「先生」の眼差しでもあったのだろうと私は思った。

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