暮らし百景アーカイブ64

小さな道草。この春小学校に入ったひとり息子を、わたしは、今朝も急がせる。真新しい黄色い帽子をかぶせ、ランドセルを背負わせ、のんびり屋の彼の手をひっぱるようにして一緒に玄関を出る。慣れるまで暫く学校までついて行く約束だが、わたし自身が小学生の母としてのペースを、まだ掴めていない。急ぎ足のわたしとは裏腹に、息子はきょろきょろと興味深そうにまわりを見ながら、手をひかれて通学路を歩く。何かを発見して立ち止まるたび、ランドセルの中の筆箱が、ゴトンと鳴る。通学路の交差点では、シニアボランティアの男性が旗振りをしながら、子ども達を見守ってくれている。「おはようございます〜」まっ先に息子が元気に挨拶をする。「はい、いってらっしゃい」と、男性はにこにこ旗を振る。わたしは深々と会釈をしながらも、学校へと急ぐのだった。息子を送った帰り道、いつもはもういない旗振りの男性が立っていた。「お母さん。もう5分だけ、早く出られるといいですね」男性は、いつもの笑顔で続けた。「子どもは、河原の鳥や土に這ってる虫を、一つずつ見つけながら行きたいもんなんです。目的地に無駄なく着くなんて、少しも頭にないからねぇ」その言葉は、さわやかな風のようにわたしの中を吹き抜けた。旗を後ろ手に去っていく男性に向かってわたしは、「ありがとう、ございますっ!」と、子どものように元気よく答えた。

小さな道草。この春小学校に入ったひとり息子を、わたしは、今朝も急がせる。真新しい黄色い帽子をかぶせ、ランドセルを背負わせ、のんびり屋の彼の手をひっぱるようにして一緒に玄関を出る。慣れるまで暫く学校までついて行く約束だが、わたし自身が小学生の母としてのペースを、まだ掴めていない。急ぎ足のわたしとは裏腹に、息子はきょろきょろと興味深そうにまわりを見ながら、手をひかれて通学路を歩く。何かを発見して立ち止まるたび、ランドセルの中の筆箱が、ゴトンと鳴る。通学路の交差点では、シニアボランティアの男性が旗振りをしながら、子ども達を見守ってくれている。「おはようございます〜」まっ先に息子が元気に挨拶をする。「はい、いってらっしゃい」と、男性はにこにこ旗を振る。わたしは深々と会釈をしながらも、学校へと急ぐのだった。息子を送った帰り道、いつもはもういない旗振りの男性が立っていた。「お母さん。もう5分だけ、早く出られるといいですね」男性は、いつもの笑顔で続けた。「子どもは、河原の鳥や土に這ってる虫を、一つずつ見つけながら行きたいもんなんです。目的地に無駄なく着くなんて、少しも頭にないからねぇ」その言葉は、さわやかな風のようにわたしの中を吹き抜けた。旗を後ろ手に去っていく男性に向かってわたしは、「ありがとう、ございますっ!」と、子どものように元気よく答えた。

小さな道草。この春小学校に入ったひとり息子を、わたしは、今朝も急がせる。真新しい黄色い帽子をかぶせ、ランドセルを背負わせ、のんびり屋の彼の手をひっぱるようにして一緒に玄関を出る。慣れるまで暫く学校までついて行く約束だが、わたし自身が小学生の母としてのペースを、まだ掴めていない。急ぎ足のわたしとは裏腹に、息子はきょろきょろと興味深そうにまわりを見ながら、手をひかれて通学路を歩く。何かを発見して立ち止まるたび、ランドセルの中の筆箱が、ゴトンと鳴る。通学路の交差点では、シニアボランティアの男性が旗振りをしながら、子ども達を見守ってくれている。「おはようございます〜」まっ先に息子が元気に挨拶をする。「はい、いってらっしゃい」と、男性はにこにこ旗を振る。わたしは深々と会釈をしながらも、学校へと急ぐのだった。息子を送った帰り道、いつもはもういない旗振りの男性が立っていた。「お母さん。もう5分だけ、早く出られるといいですね」男性は、いつもの笑顔で続けた。「子どもは、河原の鳥や土に這ってる虫を、一つずつ見つけながら行きたいもんなんです。目的地に無駄なく着くなんて、少しも頭にないからねぇ」その言葉は、さわやかな風のようにわたしの中を吹き抜けた。旗を後ろ手に去っていく男性に向かってわたしは、「ありがとう、ございますっ!」と、子どものように元気よく答えた。

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