暮らし百景アーカイブ59

我が家の桜前線。この季節がやって来ると、庭に桜の木がある家をうらやましく思いながら通りすぎることがある。家でお花見ができるとは、なんと贅沢であろうか。幸運なことに、我が家の向かい側はこじんまりとした児童公園で、周りをぐるりとソメイヨシノが囲んでいる。今年は、春の遅いこの地でも急ぎ足な開花に戸惑いながら、週末ベランダで妻とささやかな宴を楽しんだ。「修平、うちの桜見たいでしょうね。」「うちの桜だって?うちの向かいの桜、だろう?」「修平が生まれてから、二十年以上も一緒に見てきたのに。寂しいわぁ。」妻は、四月の声を聞く前に都会の就職先へ巣立った息子のことが、頭から離れないらしい。新たに始まった夫婦ふたりの日常は、もっぱら息子の話題で占有される。「そうだわっ!修平にうちの桜、届けましょうよ。」妻にうながされるまま、わたし達は連れ立って、向かい側の公園のソメイヨシノの下に立った。そして、はらりはらりと舞い落ちてくる花びらの中で、できるだけ形がよく色の美しいものをひとひら、またひとひらと集めた。妻はそれらを丁寧に半紙に挟んで押し花にし、したためた手紙とともに送った。昨日の夜、息子から妻の携帯電話へメールが届いた。「ワンルームに、桜前線到来。修平拝」たった1行の花見報告に、今までにない大人の顔がのぞいていた。

我が家の桜前線。この季節がやって来ると、庭に桜の木がある家をうらやましく思いながら通りすぎることがある。家でお花見ができるとは、なんと贅沢であろうか。幸運なことに、我が家の向かい側はこじんまりとした児童公園で、周りをぐるりとソメイヨシノが囲んでいる。今年は、春の遅いこの地でも急ぎ足な開花に戸惑いながら、週末ベランダで妻とささやかな宴を楽しんだ。「修平、うちの桜見たいでしょうね。」「うちの桜だって?うちの向かいの桜、だろう?」「修平が生まれてから、二十年以上も一緒に見てきたのに。寂しいわぁ。」妻は、四月の声を聞く前に都会の就職先へ巣立った息子のことが、頭から離れないらしい。新たに始まった夫婦ふたりの日常は、もっぱら息子の話題で占有される。「そうだわっ!修平にうちの桜、届けましょうよ。」妻にうながされるまま、わたし達は連れ立って、向かい側の公園のソメイヨシノの下に立った。そして、はらりはらりと舞い落ちてくる花びらの中で、できるだけ形がよく色の美しいものをひとひら、またひとひらと集めた。妻はそれらを丁寧に半紙に挟んで押し花にし、したためた手紙とともに送った。昨日の夜、息子から妻の携帯電話へメールが届いた。「ワンルームに、桜前線到来。修平拝」たった1行の花見報告に、今までにない大人の顔がのぞいていた。

我が家の桜前線。この季節がやって来ると、庭に桜の木がある家をうらやましく思いながら通りすぎることがある。家でお花見ができるとは、なんと贅沢であろうか。幸運なことに、我が家の向かい側はこじんまりとした児童公園で、周りをぐるりとソメイヨシノが囲んでいる。今年は、春の遅いこの地でも急ぎ足な開花に戸惑いながら、週末ベランダで妻とささやかな宴を楽しんだ。「修平、うちの桜見たいでしょうね。」「うちの桜だって?うちの向かいの桜、だろう?」「修平が生まれてから、二十年以上も一緒に見てきたのに。寂しいわぁ。」妻は、四月の声を聞く前に都会の就職先へ巣立った息子のことが、頭から離れないらしい。新たに始まった夫婦ふたりの日常は、もっぱら息子の話題で占有される。「そうだわっ!修平にうちの桜、届けましょうよ。」妻にうながされるまま、わたし達は連れ立って、向かい側の公園のソメイヨシノの下に立った。そして、はらりはらりと舞い落ちてくる花びらの中で、できるだけ形がよく色の美しいものをひとひら、またひとひらと集めた。妻はそれらを丁寧に半紙に挟んで押し花にし、したためた手紙とともに送った。昨日の夜、息子から妻の携帯電話へメールが届いた。「ワンルームに、桜前線到来。修平拝」たった1行の花見報告に、今までにない大人の顔がのぞいていた。

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