暮らし百景アーカイブ39

できあがったばかりの、一枚の写真がある。私のとなりで、めかしこんだ少年は、その晴れ姿とは裏腹に、なぜか泣き出しそうな顔をしている。それは、先週の日曜日のこと。ひと足早く、次男の七五三のお宮参りに出かけた。お値段は大人並みのくせに、すぐ小さくなるフォーマルスーツは、おにいちゃんのおさがり。でもシャツとハイソックスだけは、真っ白いのを新調したのだ。次男にとっては初めての「よそゆき」。予想以上の喜びようで、得意げに鏡の前でポーズをとっていた。ところがお参りをすませて写真館へ向かう途中、はしゃいでいた彼が急に沈みこんでしまった。楽しみにしていた写真撮影にも行きたくないと言い出す。子ども心と秋の空。内心いらつきつつ、「せっかくかっこいいのになあ」。が、なだめすかしたつもりが、いきなり泣き出した。見れば、真っ白いシャツの胸元にくっきりと無残なシミ。なめていた千歳飴をくっつけて、しかもあわてて汚れた手でこすったらしい。なんとか泣きやんだものの、カメラマンの「ボク、笑って、笑って」の声にもついに笑顔が出ることはなかった。「だいじょうぶ、おかあさん、お洗たく得意だから。最初の時みたいに真っ白になるよ」「ほんと?」ようやくパッと輝くような笑顔が彼に戻ってきた。男の子が記念写真を撮る機会は少ない。次に彼が写真館に行くのは、たぶん二十数年も先。その時はもう、私でない女性が、となりに写ることになる。それまでに、私はきっと何度もこの写真をながめては、あの時の彼の泣きべそと、雨上がりの虹のような笑顔を思い出すのだろう。

できあがったばかりの、一枚の写真がある。私のとなりで、めかしこんだ少年は、その晴れ姿とは裏腹に、なぜか泣き出しそうな顔をしている。それは、先週の日曜日のこと。ひと足早く、次男の七五三のお宮参りに出かけた。お値段は大人並みのくせに、すぐ小さくなるフォーマルスーツは、おにいちゃんのおさがり。でもシャツとハイソックスだけは、真っ白いのを新調したのだ。次男にとっては初めての「よそゆき」。予想以上の喜びようで、得意げに鏡の前でポーズをとっていた。ところがお参りをすませて写真館へ向かう途中、はしゃいでいた彼が急に沈みこんでしまった。楽しみにしていた写真撮影にも行きたくないと言い出す。子ども心と秋の空。内心いらつきつつ、「せっかくかっこいいのになあ」。が、なだめすかしたつもりが、いきなり泣き出した。見れば、真っ白いシャツの胸元にくっきりと無残なシミ。なめていた千歳飴をくっつけて、しかもあわてて汚れた手でこすったらしい。なんとか泣きやんだものの、カメラマンの「ボク、笑って、笑って」の声にもついに笑顔が出ることはなかった。「だいじょうぶ、おかあさん、お洗たく得意だから。最初の時みたいに真っ白になるよ」「ほんと?」ようやくパッと輝くような笑顔が彼に戻ってきた。男の子が記念写真を撮る機会は少ない。次に彼が写真館に行くのは、たぶん二十数年も先。その時はもう、私でない女性が、となりに写ることになる。それまでに、私はきっと何度もこの写真をながめては、あの時の彼の泣きべそと、雨上がりの虹のような笑顔を思い出すのだろう。

できあがったばかりの、一枚の写真がある。私のとなりで、めかしこんだ少年は、その晴れ姿とは裏腹に、なぜか泣き出しそうな顔をしている。それは、先週の日曜日のこと。ひと足早く、次男の七五三のお宮参りに出かけた。お値段は大人並みのくせに、すぐ小さくなるフォーマルスーツは、おにいちゃんのおさがり。でもシャツとハイソックスだけは、真っ白いのを新調したのだ。次男にとっては初めての「よそゆき」。予想以上の喜びようで、得意げに鏡の前でポーズをとっていた。ところがお参りをすませて写真館へ向かう途中、はしゃいでいた彼が急に沈みこんでしまった。楽しみにしていた写真撮影にも行きたくないと言い出す。子ども心と秋の空。内心いらつきつつ、「せっかくかっこいいのになあ」。が、なだめすかしたつもりが、いきなり泣き出した。見れば、真っ白いシャツの胸元にくっきりと無残なシミ。なめていた千歳飴をくっつけて、しかもあわてて汚れた手でこすったらしい。なんとか泣きやんだものの、カメラマンの「ボク、笑って、笑って」の声にもついに笑顔が出ることはなかった。「だいじょうぶ、おかあさん、お洗たく得意だから。最初の時みたいに真っ白になるよ」「ほんと?」ようやくパッと輝くような笑顔が彼に戻ってきた。男の子が記念写真を撮る機会は少ない。次に彼が写真館に行くのは、たぶん二十数年も先。その時はもう、私でない女性が、となりに写ることになる。それまでに、私はきっと何度もこの写真をながめては、あの時の彼の泣きべそと、雨上がりの虹のような笑顔を思い出すのだろう。

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