暮らし百景アーカイブ32

月見803号。商店街の和菓子屋で、団子のおいしそうなのを見つけたことから、突然、お月見をやろうと思いたった。昨日のことだ。子どもの頃から社宅、マンションを転々としてきた私にとって、お月見の記憶はない。はて、うちに三方なんてあったかしら。すすきはどこから取ってきたものかしら。驚いたことに、すすきは花屋にあった。すすきが花屋に!そうか、ここらじゃすすきは買うものなのか…。で、店の主人の話によると、すすきの、あの薄茶色の穂のようなものは、いちおう花らしい。そして桜と同じようにちゃんと開花前線もあるそうな。さて、本来なら縁側に座するのが風流というものだろうが、何しろここは803号室。狭いベランダ、高い柵、ガラス戸に、網戸。せめてきれいに磨き上げてお月さまを迎えようではないか。と思うと、いてもたってもいられない。気がつけば両手に雑巾、足許にはバケツの大掃除。夏の間の汚れを一掃すると、空気まで秋らしく澄んできたような気がして、得した気分。部屋の中の電気を消すと、月の光の明るさがよくわかる。さあ、団子もすすきもセッティングしたし、秘蔵のお酒も準備したし。しばし時間と世間を忘れて名月に酔いしれようぞ。と、腰をおろして十五分。803号から見る月は、向かいのビルにあっ気なく隠れてしまったのだった。

月見803号。商店街の和菓子屋で、団子のおいしそうなのを見つけたことから、突然、お月見をやろうと思いたった。昨日のことだ。子どもの頃から社宅、マンションを転々としてきた私にとって、お月見の記憶はない。はて、うちに三方なんてあったかしら。すすきはどこから取ってきたものかしら。驚いたことに、すすきは花屋にあった。すすきが花屋に!そうか、ここらじゃすすきは買うものなのか…。で、店の主人の話によると、すすきの、あの薄茶色の穂のようなものは、いちおう花らしい。そして桜と同じようにちゃんと開花前線もあるそうな。さて、本来なら縁側に座するのが風流というものだろうが、何しろここは803号室。狭いベランダ、高い柵、ガラス戸に、網戸。せめてきれいに磨き上げてお月さまを迎えようではないか。と思うと、いてもたってもいられない。気がつけば両手に雑巾、足許にはバケツの大掃除。夏の間の汚れを一掃すると、空気まで秋らしく澄んできたような気がして、得した気分。部屋の中の電気を消すと、月の光の明るさがよくわかる。さあ、団子もすすきもセッティングしたし、秘蔵のお酒も準備したし。しばし時間と世間を忘れて名月に酔いしれようぞ。と、腰をおろして十五分。803号から見る月は、向かいのビルにあっ気なく隠れてしまったのだった。

月見803号。商店街の和菓子屋で、団子のおいしそうなのを見つけたことから、突然、お月見をやろうと思いたった。昨日のことだ。子どもの頃から社宅、マンションを転々としてきた私にとって、お月見の記憶はない。はて、うちに三方なんてあったかしら。すすきはどこから取ってきたものかしら。驚いたことに、すすきは花屋にあった。すすきが花屋に!そうか、ここらじゃすすきは買うものなのか…。で、店の主人の話によると、すすきの、あの薄茶色の穂のようなものは、いちおう花らしい。そして桜と同じようにちゃんと開花前線もあるそうな。さて、本来なら縁側に座するのが風流というものだろうが、何しろここは803号室。狭いベランダ、高い柵、ガラス戸に、網戸。せめてきれいに磨き上げてお月さまを迎えようではないか。と思うと、いてもたってもいられない。気がつけば両手に雑巾、足許にはバケツの大掃除。夏の間の汚れを一掃すると、空気まで秋らしく澄んできたような気がして、得した気分。部屋の中の電気を消すと、月の光の明るさがよくわかる。さあ、団子もすすきもセッティングしたし、秘蔵のお酒も準備したし。しばし時間と世間を忘れて名月に酔いしれようぞ。と、腰をおろして十五分。803号から見る月は、向かいのビルにあっ気なく隠れてしまったのだった。

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