暮らし百景アーカイブ13

卒業までの二週間。ふと手を止めて、壁のカレンダーを見る。長男の制服やシャツに、こうしてアイロンをかけるのも、あと何回だろう。三年前、できあがってきた制服に初めて袖を通した彼の姿は、申し訳ないけれど思わず吹き出してしまうかわいらしさだった。どうせすぐぴったりになるからと、丈は長め、幅は広め。それが、一年もたたないうちにぴったりどころかぴっちりになり、この冬服はすでに二代目だ。それももう、限界が近づいている。テカテカになって、ぬけそうなひじやひざ。アイロンをものともしない、強力なすわりじわ。シャツのカラーは、どうすればたったの一日でこんなに汚れるのかと、いつも思う。ひどくなったニキビが首にまで進出してきた時には、カラーが当たって痛いとぼやいていたっけ。糊の具合にまでいちいち注文をつけるようになったのもその頃からだ。「あんまりパリパリにしないで、やわらかめにしてよ」「そんなに言うなら自分でやりなさい。技術家庭でそういうこと教わらないの?」何度となく繰り返された彼と私の争いも、終結まで秒読みに入った。もう少しの間、彼をよろしく。そんな思いで、いつもより念入りにブラシをかけていると、金ボタンがひとつ、とれかかっているのに気づいた。そういえば、私が少女だった頃は、卒業式に好きな人から第二ボタンをもらうのが夢だった。今でも、そんな習慣はあるのだろうか。彼が渡すとしたら、時々電話をかけてくるあの子だろうか……。ちょっとやそっとじゃ、いや、絶対にとれないように、しっかりとつけ直しておこう。

卒業までの二週間。ふと手を止めて、壁のカレンダーを見る。長男の制服やシャツに、こうしてアイロンをかけるのも、あと何回だろう。三年前、できあがってきた制服に初めて袖を通した彼の姿は、申し訳ないけれど思わず吹き出してしまうかわいらしさだった。どうせすぐぴったりになるからと、丈は長め、幅は広め。それが、一年もたたないうちにぴったりどころかぴっちりになり、この冬服はすでに二代目だ。それももう、限界が近づいている。テカテカになって、ぬけそうなひじやひざ。アイロンをものともしない、強力なすわりじわ。シャツのカラーは、どうすればたったの一日でこんなに汚れるのかと、いつも思う。ひどくなったニキビが首にまで進出してきた時には、カラーが当たって痛いとぼやいていたっけ。糊の具合にまでいちいち注文をつけるようになったのもその頃からだ。「あんまりパリパリにしないで、やわらかめにしてよ」「そんなに言うなら自分でやりなさい。技術家庭でそういうこと教わらないの?」何度となく繰り返された彼と私の争いも、終結まで秒読みに入った。もう少しの間、彼をよろしく。そんな思いで、いつもより念入りにブラシをかけていると、金ボタンがひとつ、とれかかっているのに気づいた。そういえば、私が少女だった頃は、卒業式に好きな人から第二ボタンをもらうのが夢だった。今でも、そんな習慣はあるのだろうか。彼が渡すとしたら、時々電話をかけてくるあの子だろうか……。ちょっとやそっとじゃ、いや、絶対にとれないように、しっかりとつけ直しておこう。

卒業までの二週間。ふと手を止めて、壁のカレンダーを見る。長男の制服やシャツに、こうしてアイロンをかけるのも、あと何回だろう。三年前、できあがってきた制服に初めて袖を通した彼の姿は、申し訳ないけれど思わず吹き出してしまうかわいらしさだった。どうせすぐぴったりになるからと、丈は長め、幅は広め。それが、一年もたたないうちにぴったりどころかぴっちりになり、この冬服はすでに二代目だ。それももう、限界が近づいている。テカテカになって、ぬけそうなひじやひざ。アイロンをものともしない、強力なすわりじわ。シャツのカラーは、どうすればたったの一日でこんなに汚れるのかと、いつも思う。ひどくなったニキビが首にまで進出してきた時には、カラーが当たって痛いとぼやいていたっけ。糊の具合にまでいちいち注文をつけるようになったのもその頃からだ。「あんまりパリパリにしないで、やわらかめにしてよ」「そんなに言うなら自分でやりなさい。技術家庭でそういうこと教わらないの?」何度となく繰り返された彼と私の争いも、終結まで秒読みに入った。もう少しの間、彼をよろしく。そんな思いで、いつもより念入りにブラシをかけていると、金ボタンがひとつ、とれかかっているのに気づいた。そういえば、私が少女だった頃は、卒業式に好きな人から第二ボタンをもらうのが夢だった。今でも、そんな習慣はあるのだろうか。彼が渡すとしたら、時々電話をかけてくるあの子だろうか……。ちょっとやそっとじゃ、いや、絶対にとれないように、しっかりとつけ直しておこう。

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