暮らし百景アーカイブ4

寄り道したい夜。「できれば、早く帰ってきてね。」「仕事しだいだから、わからないよ。」こんな日に限って、妻の期待どおりに仕事は終わる。終業のベルが恨めしい。実はきょう、娘が初めて家に彼氏を連れてくる。高校の同級生で、娘がマネージャーを務めるテニス部のホープだとか。なるほど、いい加減なあいつが、珍しく部活に熱心だったわけだ。「さて、帰ったものかどうか。」決心がつかないまま、電車に乗った。「会ってみたい気もするけど…。」地元の駅に着き、用もないのに書店に入り、気がつくと七時を回っていた。「そろそろかな。」彼氏が帰っていることを願って、玄関の扉を開けた。その瞬間、見慣れない巨大な靴が目に入り、びっくりしていると、ちょうど居間から娘と彼氏が出てきて、またびっくりした。彼氏は、「どうも」と言って靴を履き、私は彼を見上げる格好で、「どうも」と言う。なんか、気に入らない。見ると娘は、今までに見せたこともない笑顔で、「駅まで送ってきま〜す。」と出ていった。私は、気持ちを落ち着けるように缶ビールをひと口飲んで、妻に言った。「まいったなぁ。無愛想なあいつがね。あんな笑顔、見たことあるかい。」「あるある。幼稚園の頃はね、いつもああだった。」妻はそう言いながら、居間に飾ってある小さな額縁を手に取った。そこには、お風呂で私に抱かれて、笑顔満面の娘がいた。十数年があっという間に思える、笑顔だった。

寄り道したい夜。「できれば、早く帰ってきてね。」「仕事しだいだから、わからないよ。」こんな日に限って、妻の期待どおりに仕事は終わる。終業のベルが恨めしい。実はきょう、娘が初めて家に彼氏を連れてくる。高校の同級生で、娘がマネージャーを務めるテニス部のホープだとか。なるほど、いい加減なあいつが、珍しく部活に熱心だったわけだ。「さて、帰ったものかどうか。」決心がつかないまま、電車に乗った。「会ってみたい気もするけど…。」地元の駅に着き、用もないのに書店に入り、気がつくと七時を回っていた。「そろそろかな。」彼氏が帰っていることを願って、玄関の扉を開けた。その瞬間、見慣れない巨大な靴が目に入り、びっくりしていると、ちょうど居間から娘と彼氏が出てきて、またびっくりした。彼氏は、「どうも」と言って靴を履き、私は彼を見上げる格好で、「どうも」と言う。なんか、気に入らない。見ると娘は、今までに見せたこともない笑顔で、「駅まで送ってきま〜す。」と出ていった。私は、気持ちを落ち着けるように缶ビールをひと口飲んで、妻に言った。「まいったなぁ。無愛想なあいつがね。あんな笑顔、見たことあるかい。」「あるある。幼稚園の頃はね、いつもああだった。」妻はそう言いながら、居間に飾ってある小さな額縁を手に取った。そこには、お風呂で私に抱かれて、笑顔満面の娘がいた。十数年があっという間に思える、笑顔だった。

寄り道したい夜。「できれば、早く帰ってきてね。」「仕事しだいだから、わからないよ。」こんな日に限って、妻の期待どおりに仕事は終わる。終業のベルが恨めしい。実はきょう、娘が初めて家に彼氏を連れてくる。高校の同級生で、娘がマネージャーを務めるテニス部のホープだとか。なるほど、いい加減なあいつが、珍しく部活に熱心だったわけだ。「さて、帰ったものかどうか。」決心がつかないまま、電車に乗った。「会ってみたい気もするけど…。」地元の駅に着き、用もないのに書店に入り、気がつくと七時を回っていた。「そろそろかな。」彼氏が帰っていることを願って、玄関の扉を開けた。その瞬間、見慣れない巨大な靴が目に入り、びっくりしていると、ちょうど居間から娘と彼氏が出てきて、またびっくりした。彼氏は、「どうも」と言って靴を履き、私は彼を見上げる格好で、「どうも」と言う。なんか、気に入らない。見ると娘は、今までに見せたこともない笑顔で、「駅まで送ってきま〜す。」と出ていった。私は、気持ちを落ち着けるように缶ビールをひと口飲んで、妻に言った。「まいったなぁ。無愛想なあいつがね。あんな笑顔、見たことあるかい。」「あるある。幼稚園の頃はね、いつもああだった。」妻はそう言いながら、居間に飾ってある小さな額縁を手に取った。そこには、お風呂で私に抱かれて、笑顔満面の娘がいた。十数年があっという間に思える、笑顔だった。

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