october|10月 神無月 記憶の中の香り 絵の具の香り

october|10月 神無月 記憶の中の香り 絵の具の香り

october|10月 神無月 記憶の中の香り 絵の具の香り

image-02

最後の文化祭に向けて、
10月の放課後は、クラスで出店する喫茶店の看板作りに燃えていた。

「ここ、もうちょっと大胆に塗っちゃおうよ」
「あはは、そこまでやっちゃう!?」
「ちょ、お前の話がおかしすぎて、変なところまで塗っちゃったじゃん!」
男子も女子も、秀才も、テニス部のマドンナも、
ちょっとグレたあいつも、そして私も……、
みんな、絵の具の筆を持つ手をいろいろな色に染めている。
笑い声がこだまする教室を絵の具のなんとも言えない香りが包みながら、
ひとつの看板が少しずつでき上がっていった。

あぁ、楽しい。なんていいクラスなんだろう。
作業の手を止めて、窓の外の夕暮れにぼんやり目をやる。
でも、この看板が完成したら、文化祭が終わったら……。
この楽しさは、いつまでも続くんだろうか。
それ以上考えたくなくなって、再び筆を一生懸命動かした。

中学生の息子の文化祭を訪ねると、
あちらこちらから、懐かしい、あの絵の具の香りがした。
卒業して、別々の道に進んだクラスメイトのみんなに、
久しぶりに会いたくなった。

投稿:ふ〜さん 執筆:編集者/ライター 秋山香織

Page Top