忘れもしない、中学2年の夏休みのこと。
すると、土からモワッと立ち上るような香りが漂ってきた。 雨の香り! 家族には不思議がられるけれど、 子どものころから、雨の降り始めにするこの香りが、私は好きでたまらない。 胸いっぱいに吸い込むと、なぜか心が躍った。
次の瞬間、 徒競走のピストルが鳴ったかのように、 降りしきる雨の中を走り抜けていた。
暑さで火照った体に、雨のシャワーはなんて心地いいんだろう。 際立つ雨の香りを吸い込み、びしょ濡れになりながら、 私は何からも自由になっていた。
夕立ちが降り出すと、雨の香りを楽しみながら、 あの日のすがすがしさを思い出す。 もう、あんな無茶はできないけれど。
家の近くの図書館から帰ろうとすると、 雨雲が垂れ込めた空からポツリポツリと雨粒が落ちてきた。 すぐさまザアーッとひどい降り方に変わり、髪も肩も濡れていく。
投稿:かぁ〜りさん 執筆:編集者/ライター 秋山香織