January|1月 睦月 記憶の中の香り 年賀状の香り

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January|1月 睦月 記憶の中の香り 年賀状の香り

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年が明けて間もなく、実家から届いたみかん。
塗り立てのネイルを気にしながら皮をむくと、
甘酸っぱい汁が顔の前に舞う。
ふいに心は30年前へ、タイムスリップする。

小学1年生、生まれて初めてもらった年賀状はなぜか白紙だった。
すみに鉛筆で小さく「あぶってね」。
年賀状を電気コンロにかざす母の手元を、私は真剣に見つめた。
やがて甘く香ばしい匂いが漂い、薄茶色に浮かび上がった文字。

「あ、け、ま、し、て……おめでとうって書いてある!」

仕掛けはあぶり出して読む、みかんの果汁をつかった隠し文字。

久しぶりに、仕掛けハガキを誰かに送ってみたくなる。
何を書こう、絵もいいな、筆はあったかしら。
にやにや考えながら、あと一つ、もう一つとみかんに手を伸ばす。
コタツの上で乾いたみかんの皮がヒーターのゆるい風でふわり香った。

文筆家 さくらいよしえ

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