生後6ヶ月ごろから、あかちゃんには前歯が生え始めます。
そして2歳半ごろには奥歯を含めたすべての乳歯が生えそろうのだそう。
「むし歯菌は身近な大人からうつる」などの知識はあっても、具体的にどう防げば良いのか?
歯の健康を守る習慣について小児歯科の先生に教えていただきました。
小児歯科学 歯学博士
坂部 潤先生
日本小児歯科学会認定小児歯科専門医、歯学博士(小児歯科学)、元米国UCLA小児矯正歯科客員研究員、目黒、成城、麻布十番、代々木上原にて小児歯科専門医院「キッズデンタル」を運営。
小児歯科学 歯学博士
坂部 潤先生
日本小児歯科学会認定小児歯科専門医、歯学博士(小児歯科学)、元米国UCLA小児矯正歯科客員研究員、目黒、成城、麻布十番、代々木上原にて小児歯科専門医院「キッズデンタル」を運営。
基本的にむし歯菌は、歯がなければ口の中に定着しません。
だから、乳歯が生え始めたらケアをスタートすると考えて問題ないと思います。
もし余裕があれば、歯が生え始める前から練習をしておくのも良いかもしれません。ママやパパの指にガーゼを巻いて歯茎をやさしく掃除すると、ハブラシの刺激に慣れるための練習になります。
歯が生える前からできるケアもあるんですね。あかちゃんの前歯が生えたら、ハブラシに切り替えるタイミングでしょうか?
そうですね。前歯はツルツルとしていて汚れがたまりにくいので、まだ慌てなくても大丈夫です。ただ前歯がそろってくる1歳ごろまでには、ママやパパによるハミガキを習慣化してほしいんです。
なぜかというと歯と歯の間や歯と歯茎の間といった、汚れのたまりやすい部分にむし歯ができやすい。乳歯が生えそろってくると、それだけ汚れがたまるので、細かい部分にも届くハブラシを使うのが理想的です。
ママやパパがあかちゃんのハミガキをするときの正しい磨き方を教えてください。
まずは大人のとる姿勢が大事だと思います。両手があくようにあかちゃんをひざ枕で寝かせてください。そして、片方の手で口を開けさせながら、もう片方の手で磨きます。
1歳半ころからイヤイヤ期に入って暴れる場合もありますよね。そういうときは、太ももの下にあかちゃんの両手を入れて、頭もしっかりと抑えた方がノドをついたりすることがなく、危なくないです。
2歳半ごろの奥歯まで生えそろったお子さんを例にすると、あちこちバラバラに磨くのではなく、奥歯の端から端までUの字を描くようにすると磨き残しが減るのでオススメですよ。大人が右利きなら、お子さんの左の奥歯から順番に磨いていくとスムーズです。奥歯の食べ物を噛む面や歯の裏側も忘れずに磨いてください。
子ども用のハミガキ粉など、歯のケアアイテムをいろいろ見かけますが、あかちゃんにも使った方が良いのでしょうか?
ハブラシにつけて使うものには、大きく分けると2つの役割があります。
まずハミガキ粉は、歯の汚れを落とすもの。ジェルタイプなど洗い流さなくても良いものもありますが、基本的にはうがいができる2歳以降くらいから使用するものだと思います。
もうひとつが、フッ素などが入っている歯に塗布して使うもの。これは歯の汚れを落とした後に、もう一度ハブラシにつけて塗るのが理想的な使い方です。
どちらの場合も、製品に書かれた使用方法や対象年齢をよく確認して使ってくださいね。
あかちゃんの歯の磨き方を具体的にイメージできました。ちなみにハミガキのときは1本ずつ磨かなくても、2本ずつくらいのセクションに分けて磨くと良いそうです。
もともと、あかちゃんの口の中にはむし歯の菌はいません。でも1歳半から3歳くらいの間に親御さんなど身近な家族からむし歯の菌がうつるんです。この期間を「感染の窓」と呼んでいます。
大事なのは、むし歯菌がうつる機会を減らしておくことです。例えば食器の共有などがいけないとよく言われますよね。でもそれだけを頑張るのではなくて、ママやパパにむし歯があるなら、きちんと治療をしておくことが大事です。
また将来的な歯並びや噛み合わせの話になるのですが、離乳食も口の動かし方や舌の動かし方を学ぶ上で大事です。基本的には育児書などにある通り、年齢と歯の成長スピードに合わせたものを食べさせてください。
家での歯のケアは、何かひとつを一生懸命頑張るというよりも、いろいろ生活習慣を少しずつ気をつけるイメージ、が良いと思います。
離乳が遅いとむし歯になりやすいと聞いたことがあるのですが本当でしょうか?
1歳半ごろに奥歯が生えてくるので、それを過ぎても高頻度で授乳をしているとどうしても、むし歯になりやすくなります。
ただ授乳は大きく個人差があることですよね。1歳半を過ぎて授乳をしていたとしても、ハミガキの習慣と両立ができていれば大丈夫だと思っています。
毎日のハミガキの習慣化が大事なんですね。あかちゃんがハミガキを好きになるような工夫があれば知りたいです。
例えば親御さんが磨く用のハブラシとは別に本人用のハブラシを用意しておいて、ハブラシの使い方など、ハミガキに慣れさせるのは必要だと思います。余裕があれば、毎日同じくらいの時間に、同じ人が磨くようにすると習慣化はしやすいです。
でも「楽しくしよう」「好きにさせよう」という部分にこだわらなくていいですよ。
結局、イヤイヤ期になると子どもは暴れて嫌がるようになります。だからといってハミガキをやめるわけにはいかないですよね。「子どもが嫌がっているから」と大人の心が折れてしまうより、嫌がっても「習慣をつける方が大事」だと割り切った方がいいと思います。
むし歯は生活習慣の影響によるところが大きいので、とにかく1日1回はしっかりと大人がハミガキをしてあげてください。
毎食後に磨かなくても良いんですか? ハミガキの回数やタイミングについて教えてください。
回数よりも、1回のハミガキの完成度を上げる方が大事だと思います。特に夜寝る前のハミガキは、大人がしっかりと仕上げ磨きをしてください。一番むし歯菌が増えやすいのが、唾液の分泌が減る就寝時なんです。
もし何らかのきっかけでむし歯菌があかちゃんの口に入っても、そこでいきなりむし歯になるわけではありません。むし歯の穴があくまでに1週間から1ヶ月はかかるといわれています。だから、日頃のハミガキと甘いものの頻度のコントロール、そしてフッ素の塗布などのケアをしていれば、むし歯は防げない病気ではないと思います。
子どもが自分で磨ける3歳以降になったら、エチケットの意味合いとして、食後のハミガキ習慣をつけるのは良いかもしれません。
ハミガキを好きになってもらおうとプレッシャーを感じなくて良いんですね。また、ミルクやおっぱいを飲んだ後のケアとして、口をすすぐために、お茶や水を飲ませるのも良いそうです。
家庭でむし歯を発見するのは難しいと思います。むし歯は食べかすそのものではなく、プラークという雑菌の塊が蓄積してできるものです。でもプラークも歯も、そして初期むし歯の部分も見た目には全部、白いんですよ。
それに子どもは、かなりむし歯が進行している状態でも、まず痛みを訴えません。歯がほとんど溶けてしまっているのに普段通りだから、ママやパパも気がつかなかったということもあります。
ではあかちゃんを歯医者さんに連れて行くのは、いつごろが良いのでしょうか。
乳歯が生え始める生後6ヶ月ごろから歯科医院に通うのをオススメします。病院は子どもとの相性もあるので、実際に行ってみないとわからない部分が大きいですよね。むし歯になってからでは慌ててしまうので、普段からかかりつけ医を探してみてください。
むし歯になっていなくても日頃から通っていれば、衛生士さんに歯のケア方法を聞いたり、フッ素を塗ってもらったり、予防のためにできることはいろいろあります。
もしあかちゃんがむし歯になるとしたら1歳半ごろからですが、定期的に歯科に通っていれば早く発見できるというメリットもあります。
乳歯がむし歯になると永久歯にも影響があると聞いたことがあります。本当ですか?
私たち歯科医師が危惧しているのは、むし歯になった乳歯が「むし歯菌の供給基地」のようになることです。永久歯は5歳半ごろから生え始めますが、一気に生え変わるわけではありません。小学校在学中くらいの間は、乳歯と永久歯が混在しています。
生えたばかりの永久歯はまだ柔らかい。そこに乳歯からむし歯菌がうつってしまうことはあります。そういう意味では影響があると思います。
子どものむし歯治療では材料や治療法も異なる部分が多く、専門的な知識と技能が必要なんです。子どもの場合は治療中に泣き叫んでしまうし、そうすると押さえつけながらやるしかない。お子さんにも、親御さんにも負担があると思います。だから、しっかりと予防に取り組んでくれる歯医者さんを探してみてください。
むし歯の原因のほとんどは、ハミガキが不十分だったか、甘いものの頻度が多いかだと思います。だから、あれもこれもと頑張り過ぎなくても大丈夫。そして、頼りにできるかかりつけの歯医者さん探しも、あかちゃんの歯のためにできるケアのひとつです。
歯のケアについて、難しく考え過ぎていることもあったと気がつきました。かかりつけ医を探してプロのアドバイスを参考にすれば、毎日の家での歯のケアにも自信が持てそうですね。
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