カラダの小さいあかちゃんは、大人よりも暑さの影響を受けやすいと言われています。
近年のとても暑い夏、どのように紫外線や熱中症に注意すればいいのでしょうか。
ママ・パパたちの不安を少しでも解消するため、小児科の先生に対策を教えていただきました。
小児科専門医。大学病院での研修後、NICU勤務、一般小児科を経て、現在はどうかん山こどもクリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』など。
小児科医
森戸やすみ先生
小児科専門医。大学病院での研修後、NICU勤務、一般小児科を経て、現在はどうかん山こどもクリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』など。
昔は「日焼けした子どもは健康」というイメージがあったんです。ただ、紫外線による肌への影響が大きいことがわかってきました。紫外線を浴び過ぎて起こる炎症や乾燥などのダメージから肌を守るために、あかちゃんも日焼け対策をした方がいいと思います。
あかちゃんの肌に日焼け止めを塗るとき、気をつけた方がいいことはありますか?
紫外線を避けるために、まず肌を衣服で覆って直接日光が当たらないようにしてください。乳児であれば、風通しのいい長袖と長いボトムでもいいかもしれません。水遊びのときにはラッシュガードを着せるのも紫外線対策としてオススメです。
それでも覆えない顔や手足に日焼け止めを塗ります。このとき、もし肌への負担が気になるようでしたら「紫外線散乱剤」を使用した日焼け止めを選ぶのがオススメです。どうしても長い間外にいる場合は、大人と同じように、2〜3時間ごとに塗り直すことも大切です。
また、あかちゃんの肌荒れが気になる場合は日焼け止めではなく、ワセリンを塗るのもオススメです。口のまわりが赤くなってしまったり、皮膚が乾燥気味だったりしている部分にたっぷり厚くワセリンを塗ってください。弱いながら日焼けを防ぐ効果があります。塗り方が薄いと日に焼けてしまうので注意してください。
あかちゃんを外で遊ばせる時間帯はいつ頃がいいのでしょうか?
外気浴をさせる目的なら、朝の早い時間や夕方の日がかげってからがオススメです。
午前10時から午後2時は、気温が高く紫外線量も多い時間帯なので避けた方がいいと思います。
体内で必要とするビタミンDを生成するために紫外線を浴びることが必要だと言われていますが、実は短時間で大丈夫なんです。国立環境研究所の調査では、つくば市の場合、7月で3分から10分ほどだと推定されています。
日光に当たるために外出しなくても、買い物やちょっとした移動で十分なんですね。
ただ、油断できないのが曇りの日です。曇っていても晴天時の80%の紫外線があるので、帽子やベビーカーの日除けを使いましょう。また日かげは日なたと比べると紫外線が半分に減ります。日差しが強いときはなるべく日かげにいる方がいいでしょう。
外気浴が必要な時間が思っていたより短く驚きました。衣服で覆えない部分には、こまめに日焼け止めを塗ってあげたいと思います。
子どもはカラダが小さく、大人よりも地面に近い場所にいます。ベビーカーにのっているあかちゃんも照り返しの影響があり、より暑さを感じやすいんです。
熱中症は体内の水分とミネラルが失われることから起こります。子どもは体内に蓄えられる量が少ないので大人よりも熱中症になりやすいです。大人が暑くて息苦しいと感じるとき、子どもはもっと暑さを感じていると思います。
あかちゃんにはどのように水分を摂らせてあげればいいのでしょうか?
母乳やミルクだけを飲んでいるあかちゃんは、薄めたりせずそのまま与えて大丈夫です。液体ミルクなら常温でそのままあげられます。離乳食を始めているあかちゃんなら、麦茶や経口補水液がオススメです。あかちゃん用を探さなくても、大人と同じもので大丈夫です。
ただし、スポーツドリンクをあげるときは注意してください。いわゆる清涼飲料水なのでミネラルが足りず、糖分が多いんです。飲ませ過ぎないようにしてください。
そしてママやパパがこまめに水分補給をしてあげるのもいいですが、本人の欲しいタイミングで合図ができるように、月齢によってはあかちゃんから見えるところにコップなどを置いておくのもオススメです。
あかちゃんとの外出時に持っておきたいアイテムを教えてください。
まず水分、そして、おせんべいなどの塩味のお菓子。あおぐための扇子、タオル、保冷剤などでしょうか。保冷剤を入れるポケットのついたハンカチも便利だと思います。
あかちゃんが汗をかいたときの着替えもあるといいですね。暑いからといってタンクトップに短いボトムなどの格好よりも、ある程度、皮膚を覆う衣類がいいと思います。紫外線を遮ってくれるのはもちろん、汗を吸収してくれます。とくに、肌が弱いあかちゃんの脇や関節などに塩分を含む汗がたまってしまうと、肌荒れの原因となることもあります。
あかちゃんが熱中症になっているか、判断するポイントはありますか?
あかちゃんだからといって、特別なサインはないんです。
熱中症の症状として、
・いつもより汗をたくさんかいている (もしくは、汗を全くかいていない)
・顔が赤い
・寝てばっかりいる
・熱が高い
などがあります。
でもこれらは、ささいな変化でもあります。ママ・パパたちの「なにかおかしい」「いつもと違う」という感覚を大切にしてください。熱中症の可能性に限らず、あかちゃんの様子がいつもと違うときは、小児科を受診してもらいたいです。
この夏は子どもの様子に注意しながら遊びたいと思います。水分とミネラルの補給も覚えておきたいです。
ケースバイケースですね。暑い夏に、親子が密着する抱っこ紐を長時間使うのは避けた方がいいかもしれません。少しでも快適に過ごすために、ママやパパとあかちゃんの間にタオルなどを挟んでおいて、汗をかいたら交換するという方法もあるかも。
ベビーカーはあかちゃんと地面が近いぶん、照り返しで暑さを感じやすいです。ベビーカーを選ぶときに高さのあるものを選んだ方がいいと思います。暑さが厳しい夏は、いっしょにでかける人もあかちゃんも、しんどくないように短時間のおでかけにするなど工夫をしてみてください。
WHO(世界保健機関)では、5歳以下の子どもにマスクを推奨しないとしています。いくつか理由があって、小さな子どもがマスクを適切に扱えないことや、呼吸が苦しくなってしまうことがあります。そして熱中症の症状があっても、親が顔色を判断しづらいということも考えられます。
暑い夏にマスクをつけていれば大人でも息苦しいはず。子どもはもっと暑さや苦しさを感じているのではないでしょうか。でも、それをうまく伝えることができません。子どもの肌は刺激に弱いので、マスクによる肌荒れも心配です。
ですので、小さな子どもには、ツバの広い帽子をオススメします。帽子をかぶれば人との距離が少しできるし、日除けになって紫外線対策もできるので便利ですよ。
冷却シートはひんやりして気持ちがいいだけで、カラダを冷やす効果はありません。夏に子どもの体温が高いと感じたら、氷枕や保冷剤で首や脇などを冷やしてください。
ただ、カラダの小さいあかちゃんは局所を冷やそうとしても難しいことがあります。そんなときシャワーやぬるま湯で全身を冷やしてあげる方が、簡単でカラダが冷えるのも早いです。暑いところで過ごした後は、水遊びをするのもいいかもしれませんね。
エアコンや扇風機を使い過ぎているのではないかと心配する保護者の方がいます。でも、カラダが暑さに慣れる「暑熱順化」は、1日1〜2時間ほど暑い場所にいれば進みます。買い物や登園登校、日中の遊びなどでカラダは暑さに慣れて、汗をかく準備ができます。
暑い夏、エアコンをつけずに過ごす方が危険です。室内や車内で過ごすときは、快適な温度になるように空調を使ってください。
きちんとエアコンを使っていても、窓際でお昼寝をしているうちに日差しに当たって、体温が高くなってしまうということが考えられます。室内ではカーテン、車内では日を遮るシートなどを使ってください。
そして、出かけた先であかちゃんが寝てしまったからといって、車内においたまま買い物などにいかないようにしてください。エアコンをつけていても、夏はあっと言う間に車内の温度が上がります。車内で小さな子どもが熱中症になる例がとても多いんです。
あかちゃんと過ごす夏は、紫外線による肌への影響や熱中症など、気をつけたいことがたくさんあります。熱中症などに限らず、あかちゃんの様子がいつもと違ったり、気になることがあったりしたら、ちょっとしたことでもかかりつけの病院にすぐに聞いてほしいと思います。
熱中症の対策について、勘違いしていることもありました。室内で日差しが強いところがないか確認したり、この夏は水遊びの準備もしてあげたいと思います。
イラストは、可愛い絵柄が人気の
オオカワアヤさんからの寄稿です。
花王製品をお使いいただいた
Kao PLAZA会員さまの声はこちら!