引っ越しや転勤、きょうだいの入学や入園など、春は変化の季節。
新生活のスタートはうれしい反面、慣れるまでは大人にもあかちゃんにもストレスがかかります。
今回は、あかちゃんと一緒に新生活を迎えた家庭の体験エピソードと、あかちゃんが感じるストレスや
ママ・パパへのアドバイスなどを発達心理学の専門家に教えてもらいました。
夫の転勤で他県に引っ越し。しばらくの間、当時2歳の息子のちょっとした体調不良が続くように…。知らない土地だったので、病院を探すのも大変でした。
(ペンネーム:あいちゃんさん)
第二子出産のため、長女を連れて里帰りをしたら急に夜泣きが始まりました。昼間は大好きなじいじ・ばあばと過ごせて楽しそうにおおはしゃぎしているのに。夜に何度も起きてしまうのには困りました。
(ペンネーム:こな子さん)
娘自身も楽しみにしていた保育園への入園後。最初は少しぐずる程度だった登園しぶりが、だんだんと激しくなり、毎朝激しく泣いてしまう姿がつらかったです。
(ペンネーム:ゆうりパパさん)
入園後の「行きしぶり」や、引っ越しをして急に夜泣きが激しくなったなど、新しい環境では大人と同様に、子どももストレスを感じているのかもしれませんね。
引っ越しや入園などの環境変化のあとに、子どもの様子がいつもと違うと感じたら心配になりますよね。そんなとき親はどのように接したらいいのでしょうか?丹羽先生に解決策を教えてもらいました。
専門である発達心理学の立場から、保育者養成に携わる。
講義では、学生が乳幼児期の心理的発達と合わせて、
保護者の子育て期・中年期の心理的特徴についても学ぶことを重視し、
子育てのパートナーとして保護者を支援できる保育者の育成に取り組む。
新しい生活リズムをつくろう
個人差や程度の差はあるものの、ほとんどのあかちゃんが夜泣きをします。ただ、夜泣きが始まるきっかけのひとつに、環境の変化があるといわれています。
入園などで生活のリズムが変わってしまった場合、以前と同じでなくてもいいので、一定の生活リズムを大人がつくってあげることを心がけましょう。昼間はしっかり日の光を浴びて、寝る前は暗くして明るい光が目に入らないように過ごすといった環境づくりも大切です。
抱っこで安心感を与えてあげる
環境や生活リズムが変わったことが不安で、あかちゃんがよく泣くようになることもあります。そんなときは抱っこなどのスキンシップで落ち着かせてあげましょう。そのまま、外をちょっと歩いてみるのも気分転換になります。
ただ「夜泣き」や「たそがれ泣き」など、あかちゃんがどうしても泣き止まないときもあります。そんなとき「泣き止ませなくちゃ」とがんばりすぎてしまうと、知らず知らずのうちに親にとっても負担になってしまいます。大人もできるだけ楽に構えて気分転換しながら、子どもと向き合えるといいですね。
食事は長期スパンで考えてみて
1回の食事で、食べたか食べなかったかを気にしなくても大丈夫です。それより1週間など長い目で考えてみてください。あまり食べないことがあったからといって、体にすぐ影響するわけではないはず。
熱などの体調不良が原因でなければ、余裕を持って子どもの様子を見てみましょう。毎回パーフェクトを目指すのではなく、環境に慣れるまでは楽しく食べられたらOKと考えてみてください。
スキンシップをしっかりととってみて
環境が変わるからといって、特別に関わり方を変える必要はありません。しかし、引っ越しの片づけや新しい仕事のために忙しく過ごしていると、つい子どもを抱っこする機会が減ってしまうことがあります。そんな親のちょっとした変化を子どもは感じとります。
忙しくてついスキンシップが減ってしまうという場合には、「抱っこの時間」「絵本を読む時間」など、あらかじめ1日のスケジュールに組み込むのもオススメです。
子どもが泣いていると心配になりますが、泣き止まないからといって、ずっと抱っこしていると疲れてしまうのも本音。ママもパパも息抜きしながら、いつもよりスキンシップを多めにとることを心がけたいと思いました。
生活をするうえで新しい環境になるのは、ある程度避けられないことです。では、子どもは自分の身の回りに起こる環境の変化をどう感じているのでしょうか?丹羽先生に教えてもらいました。
あかちゃんの月齢にもよりますが、例えば「住む場所が変わる」「保育園に通い始める」などのまわりの物理的な変化はあかちゃんも感じていると思います。そして環境が変わったことによって、親との関わり方や生活リズムにも変化があれば、それがあかちゃんにとっての「刺激」となります。刺激があること自体は悪いことではありません。
ただそれによって「夜泣きがひどくなった」「ごはんを食べない」などの反応が出てしまうと、親にとっては少し心配ですよね。
本来、刺激を受けること自体はプラスでもマイナスでもありません。でも刺激を受けすぎたことでマイナスと思われる反応が出ているなら、それに合った対応を考える必要があるかもしれません。
同じ「刺激」を受けても、子どもによって反応はさまざまです。大きな反応がでると、まわりの大人は困ってしまいますよね。だけど、たくさん泣いたからといって体に悪いというわけでもないので大丈夫。
人の性格は、あかちゃんの生まれ持った性質のうえに、環境からの影響が積み重なってできるといわれています。だから子どもにも、変化に強い子がいれば敏感な子もいます。これは大人も同じです。
もし、お子さんがたくさん泣いてどうしてもつらいときは、安全を確保してから、少しその場を離れてみるのはどうでしょうか。完ぺきに子育てしようと思い過ぎないで、まわりの人と相談できる環境づくりをしてみてください。
例えば、子どもをつれて親戚の家に遊びにいったときの場合。その場では楽しそうにしていたのに、帰ってくると夜泣きをしてしまうということがあります。
子どもにとってどんなに楽しい刺激だったとしても、家でリラックスしているときとは状態が違います。楽しそうにしていても、いつもと違うことをしているので、実は疲れています。この疲れを「ストレス」と呼ぶと、心や体に悪いものというイメージですが、適度な刺激は子どもの体験を豊かにするものです。何事もバランスが大切ということだと思います。
生まれてすぐのあかちゃんは、朝も夜もなく、寝て起きてという生活をしています。成長にともなってだんだん昼夜の区別がつくようになってきたら、親が生活リズムをつくってあげましょう。親の出勤や子どもの通園の時間が変わったら、また新しいリズムを調整して、基本は一定に保つことが大切です。
環境の変化によってストレスを感じるのは、むしろ大人のほうです。ストレスから無意識のうちに、親の方が緊張状態になっていたり、抱っこする余裕がなくなっていたりすることもあります。それらが原因で「親との関わり方が変わる」ことのほうが、あかちゃんにとっては大きな変化です。
新生活の始まりとともに、環境が変わるのは仕方のないことです。でも、大人がその変化を意識して、いつもよりしっかりスキンシップやコミュニケーションを取ることはできます。子どもと「どうやって楽しく過ごそうかな」と、考えてみてださい。
もともと人間は大人も子どもも関係なく、環境に順応する力を持って生まれています。もし時間がかかったとしても、いつかはちゃんと新しい環境に慣れてくれますよ。
引っ越したばかりの我が家ですが、子どもがなかなか寝なくて困っていました。ただ、それは親が感じていたストレスを子どもも感じていたのかもしれません。スキンシップの時間をとって徐々に慣れていってもらいたいです。
イラストは、可愛い絵柄が人気の
オオカワアヤさんからの寄稿です。
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